京大生おにぎりのつぶやき

京都大学農学部所属おにぎりが雑多につぶやくブログです。

品質科学 No.5 タンパク質 Part5(タンパク質の物性、エネルギー論)

やっほみんな息してる?

今月の第3週は今週だと思ったていたら先週だったらしく月に1回の段ボールを捨てる日を逃して家の中が段ボールだらけのゴミ屋敷大学生おにぎりです

今回はタンパク質の物性とそれに伴うエネルギーについて書いていくよ

そいじゃあれっつごー٩( 'ω' )و

多くのタンパク質の普遍的な物性的特徴

まずは多くのタンパク質の普遍的な物性的特徴について書いていくよ

1. 生理活性条件で天然状態(ゆらぎの小さい状態)にある

タンパク質は各々のアミノ酸配列に固有の立体構造を取ると考えられているよ

つまり通常タンパク質は熱力学的に最も安定な状態にあると考えられているよ

これは後で書くAnfinsenのドグマにも関係してくるよ

2. 変性条件で共同的(比較的急激)に変性状態へ転移する

3. 生理活性条件に戻すと変性状態から天然状態へ自発的にフォールディングする

 

Anfinsenのドグマ

まずはAnfinsenのドグマについて説明していくよ

一言で言うと

タンパク質が最終的な構造を取るのに必要な情報は全て一次構造にコーティングされていると言う仮説

のことをAnfinsenのドグマと言うよ

Anfinsenは変性したタンパク質が天然状態に自動的に戻ること(リフォールディング)を初めて示した人でその研究でノーベル化学賞を受賞した人だよ

Anfinsenはチオール還元試薬存在下で変性させたリボヌクレアーゼAの再生過程を研究していたよ

変性がおきてもリボヌクレアーゼAは124残基と比較的小さいタンパク質だから天然状態が最も安定になる条件に戻せば天然状態にすぐに再生するよ

このことは天然状態の三次元コンフォメーションの情報はポリペプチド鎖のアミノ酸配列に内在していると言えるよ

つまりタンパク質の三次構造を規定するのは一次構造だといえるということ

ちなみにだけどこの仮説に反するタンパク質があるよ

それは前回の記事にあった天然変性タンパク質

こいつは元々特定の立体構造がないから一次構造に規定されているとはいえない

Levinthalのパラドックス

次にLevinthalのパラドックスについて説明していくよ

これは簡単に言うと

ポリペプチドが取りうる全ての構造からフォールディングするには天文学的時間がかかって実際のフォールディングと矛盾するんじゃないか

っていうLevinthalの思考実験だよ

Levinthal自身は100残基からできているポリペプチドについて考えていたよ

100残基ということは99個のペプチド結合があるよね

つまり198個の二面角が存在することがわかるね

これらの結合角が仮に3つの安定したコンフォメーションションのうちのひとつだとしたら3^198個の異なるコンフォメーションをサンプリングする必要があるね

でこれを全部サンプリングしていたらたとえピコ秒(10^-12秒)で1回スケールで検証しても10^87秒(宇宙の年齢は6×10^17秒)よりはるかに長くなるね!

こんなことが実際起きるわけないよね

現在ポリペプチド鎖がタンパク質へと折りたたまれていく過程について2つの知見があるよ

1. タンパク質のフォールディングにはアミノ酸配列によって規定された特異的な経路が存在する

2. タンパク質のフォールディング経路上には特異的なフォールディング中間体が存在する

これら2つの要因によってフォールディング速度が非常に早くなっていると考えられるよ

モルテン・グロビュール

次にモルテン・グロビュールについて説明するよ

タンパク質は天然構造とランダムコイル(変性状態)の間に部分的に二次構造が保持された中間体があるよ

この中間体のことをモルテン・グロビュールというよ

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Di Thomas Splettstoesser (www.scistyle.com) - Opera propria, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=28353539

(参照2021年5月18日)

上の図を見たらわかるように球状のタンパク質ではエネルギー的に最小値を持つコンフォメーションを取るよ

その過程でモルテン・グロビュールのような準安定状態のコンフォメーションを取ることもあるよ

フォールディングファネル

 

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soka.repo.nii.ac.jp (参照2021年5月20日

これは変性状態のタンパク質が天然状態に戻るまでのコンフォメーションと自由エネルギーの関係を三次元で表現したものだよ

フォールディングファネルを見るとわかることを紹介するね

1つ目はエネルギー地形を見るにタンパク質が特定のひとつの経路だけを通ってフォールディングするわけではなく複数の経路があることがわかることだよ

2つ目は経路に応じてエネルギー的に安定な構造にフォールディングすることがわかることだよ

タンパク質のエネルギー論

今からはタンパク質の高次構造がエネルギー的にはどのように保たれているかを書いていくよ

まずタンパク質の変性状態の構造と天然状態の構造の自由エネルギーの差をΔGとして以下のように定義するよ

ΔG=ΔH-TΔS

Hはエンタルピーというよ

ここではタンパク質の主鎖、側鎖、タンパク質と溶媒間の非共有結合のエネルギーの総和と定義するよ

つまりΔHは変性状態と天然状態の上のエネルギーの総和の差のことだよ

Tは絶対温度だよ

Sはエントロピーというよ

ここではタンパク質分子と溶媒分子の自由度/秩序をもたらすのに必要なエネルギーと定義するよ

厳密にいうとエントロピーはエネルギーを温度で割ったものだから単位はJ/Kだよ

だから絶対温度をかけるんだ

まあ僕は農学徒であって工学部みたいなゴリゴリの物理屋さんじゃないからこの辺はゆるくいくよ

ΔSはエントロピーでランダムな(複雑な)コンフォメーションの方が大きくて安定なんだけど ΔHがTΔSを上回る大きなエネルギーになって全体としてΔGが0より大きくなることで天然構造の方が安定になっているんだ

実際のΔGは小さいと言われているよ

ΔGと変性

 まずは下の図を見てね

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これは見ての通り自由エネルギーの差と温度の関係だよ

低温のときと高温のときはΔG<0だから変性状態に方が多いことがわかるよ

逆にいい感じの温度のときはΔG>0で天然状態の方が多いよ

とはいってもこれはあくまでどちらもある一方の状態の方が割合的に多いというだけでどの状態でも僅かにはもう片方の状態のタンパク質も存在しているよ

正しいフォールディングを妨げる要因

次にエネルギーの話から離れて正しいフォールディングを妨げている要因について書いていくよ

要因は大きく分けて3つあるよ

1. フォールディング過程での会合

2. 間違ったジスルフィド結合

3. プロリンの異性化

それぞれもうちょっと詳しく見てみる

フォールディング過程での会合

これは文字通りフォールディング中にタンパク質同士が会合しちゃって凝集体になることだよ

こうなると理想的なフォールディングはできない

Anfinsenがタンパク質のリフォールディングに成功したことは上に書いたけどあれはタンパク質がすごい単純でかつ極めて理想的な条件でやっているからできたんだよね

実際問題体の中で同じことをやろうとすると他のタンパク質分子との相互作用や物理化学的な問題によって理想的には進まないよ

間違ったジスルフィド結合

これも文字通りフォールディング中に間違ったジスルフィド結合が生じて理想的なフォールディングができなくなることだよ

これはタンパク質中に多くのチオール基があることが原因だよ

まあチオール基が多くなるとその分想定していない他のチオール基と結合することが起こりやすくなるからね

プロリンの異性化

次にプロリンの異性化について説明するね

まず前提としてタンパク質を構成するペプチド結合についてはC=OとN-Hはトランス型をとるよ

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だけどプロリン残基についてはシス型とトランス型の自由エネルギー差が小さいからその横のアミノ酸残基とのペプチド結合がシス型になることが往々にしてある

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その結果変性状態のタンパク質の両構造間の転移反応(シス-トランス異性化反応)が極めて遅い

その結果この転移反応がタンパク質のフォールディングの律速段階になることがあるよ

補足だけど律速段階とは反応経路中で1番反応速度が遅い反応を言うよ

その反応が進まないと他の反応が進まないからこのような名前がついているよ

まじで余談だけど高校でやるやつで律速段階があるのでちょっとマイナーなものに銀樹の生成があるよ

あれって銀樹の凝集が3ステップで行われていて反応律速凝集と拡散律速凝集と言われているよ

まあこれは高校の課題研究でやったから知ってるだけなんだけど

この話はこれで終わるけど興味がある人はネットか僕に聞いてね

高校生のときはなんの研究しているのかわからなかったけど今なら逆に何故かわかるので笑

分子シャペロン

今までフォールディングが邪魔される話ばかりしたけど実際はいい感じにフォールディングされてる

と言うことはなんかの要因でフォールディングがうまくいくように工夫されているわけだよね

それが分子シャペロンだよ

分子シャペロンとは他のタンパク質の折りたたみを補助する働きを持つタンパク質の総称だよ

こいつらはまだ折りたたまれていない新生ペプチドが分子間力やジスルフィド結合によって凝集することを防いで、天然構造を取ることを促すんだ

タンパク質関連でいろいろな働きをする小胞体の中には多くの分子シャペロンが存在しているよ

代表的なものを例に挙げるよ

熱ショックタンパク質Hsp)ファミリー

例:BiP, Hsp40系(ERdj1-7), GRP94

これらは細胞が熱などによるストレス条件下で発現する分子シャペロンだよ

・レクチンファミリー

例:カルネキシン, カルレチキュリン

これらは新生糖タンパク質のフォールディングの補助をするよ

タンパク質オキシドレダクターゼ(チオレドキシンファミリー)

例:PDI, ER-60/ERp57, ERp72

これらはジスルフィド結合の導入の補助をするよ

 

今回はこの辺で終わりにするよ

予定ではあと10個くらいタンパク質について書こうと思っているんだけどそうしている間に脂質の話が終わっちゃたよ

講義に追いつけるかが不安だね

間違いがあったら教えてね

ではでは〜